新年早々、唐突デスガ、この「遊星測候所」を時おり訪れる、数少なき奇特な人であるアナタは、仏教の聖地チベットが今、どんな風になっているのかご存知だろうか?
チベットと言えば、世界の屋根、ヒマラヤの麓、神々の山が連なる聖地、シャンバラ伝説の理想郷、ダライ・ラマ14世…。人によってそのイメージは様々だろう。
殆どの人は、実のところ、その内情はよく知らないかと思う。何故ならば、中国政府による報道規制にて知らされてないからだ。当然、自分も殆ど知らなかった。数日前までは…。
2015年夏から日本で公開され、現在も上映中のドキュメンタリー映画に、『ルンタ』という作品がある。チベットの今を知るには、まず、この映画の予告篇を見るのが早い。良かったら以下をひとまず観てほしい。
池谷薫という監督が制作したこの映画は、中原一博という、インド北部に30年以上住んでおられる日本人のNGOの方が、様々なチベット人にインタビュアーとして主演してる。この中原一博と言う方は、いったいどんな人なのか?
中原一博
NAKAHARA KAZUHIRO
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学第一文学部仏文学科及び理工学部建築学科卒業。インド北部のラダックを旅行中、チベット仏教建築に魅せられ卒業論文のテーマにしたのがきっかけで、チベット亡命政府と運命的な出会いを果たす。1985年、専属の建築家として家族とともにダラムサラ(ダライ・ラマ14世が住む町、筆者加筆)に移住。亡命政府の庁舎や僧院、学校など、数多くの建築物の設計を手がける。代表作の「ノルブリンカ・インスティテュート」は慈悲の象徴である千手観音を全体のプランに用い、完成までに9年の歳月を費やした。1997年、NGO「ルンタプロジェクト」を発足。チベット本土でデモを行い、刑務所で拷問を受けた後、インドに逃れた元政治犯の支援を開始し、自ら資金を集め設計したルンタハウスで彼らの学習・就労支援を行う。2008年、チベット全土に抗議活動が広がると「チベットNOW@ルンタ」のサイトを立ち上げ、ブロガーとしてチベット人の非暴力の闘いを連日のように発信。翌2009年に焼身抗議が始まってからは全ての焼身者の詳細なリポートを送り続けている。 ブログ「チベットNOW@ルンタ」:http://blog.livedoor.jp/rftibet/
(映画『ルンタ』オフィシャルサイト / キャスト、より)
この、中原一博氏と数日前、佐世保市某所の、とある邸宅にて、3人の友人と夕食をしながら約3時間、貴重なお話を伺う機会があった。機会は、まったくの偶然だった。
中原氏は昨年暮れに来日し、この日は福岡で、「スーパーサンガ」という、宗派を超えてチベットの平和を祈念し行動する僧侶・在家の会主催の、チベット救援募金を兼ねた講演をされ、その足で佐世保市在住のチベット・タンカ画家、馬場﨑研二氏邸を訪ねて来られていた。馬場﨑氏も中原氏と同じ、インド北部、ダライ・ラマのお膝元の町、ダラムサラに長く住んでおられた。約30年来の旧知の友人の来訪なのだ。
一方、自分は先週末、馬場﨑氏とご縁ある友人、SAYUさん邸での夕食会に、たまたま東京から帰省していた、小学校以来の友人で画家の松竹司氏と共にご招待を受けた。松竹クンは2年前に、東京・神田で開かれた馬場﨑氏の個展を観に来ていて、その時受付だったのがSAYUさんで、初対面ではない。個展は自分がブログで告知していた。
夕食会には、オランダから帰ったばかりの馬場﨑氏も同席してて、チベットやネパールを旅し大陸的な絵を描いてる松竹クンを、馬場﨑氏のアトリエに招き、チベット・タンカ制作の現場をお見せしようと、その会食時に、この日をセッティグさせて頂いてたのだった。
そういう経緯で、馬場﨑氏、松竹クン、SAYUさん、そして自分、ストレンジの4人が、期せずして中原氏のお話を伺う流れになった。
(後で考えると、中原氏と馬場﨑氏、SAYUさんは翌日熊本へ。友人、松竹クンは東京へ。佐世保では、この日この夜だけの、奇跡的な?会合だった。感謝!)
中原氏は、長旅の疲れがあるにも関わらず、福岡講演に使用したPC画像を開きながら、私達に、チベットの天国のように美しい風景や珍しい植物、若き僧たちの決死の姿、隣国ネパールの昨年の大地震被害の様子等をスライドで見せてくれた。
一見、無国籍のちょいワルオヤジ風の中原氏は、その、よく通るイイ声で、自身が設計した寺院の画像や、政治情勢が不安定で、まったく進んでないネパールの大地震の被害の様子の話や、スラム街の画像等、かと思えば、現在ネパールで氏自らが建設中の、まるで宮崎駿作品や、映画『指輪物語』に出て来るホビットの村のように美しい、エコ・ビレッジの画像を見せて頂き、その構想を熱く語って頂いた。
「チベットに行ってから、何十年も病気らしい病気をしたことがない」と、おっしゃる中原氏は、その言葉通りに、もの凄く元気そうな方で、話も実に何というか、スケールの違う面白さがあり、「この人の側にいると、絶対、毎日面白いに違いない!」と思わせる、自信と明るさをお持ちだ。まさに、真のアクティビストという感じだった。
天空の聖地チベットの風土がそうさせるのか、もともとそのような資質をお持ちなのか、たぶん、その両方だと思うが、今の日本のような閉塞感ある社会では、まず生まれ得ない、ダイナミックな生の律動がある方だと思った。
馬場﨑邸を後にし家に戻り、このチベット平和の使者の、夢のような濃い夜話を追想してると、ただ「凄かった!」と、自分だけの体験で終わらせて良いものか、疑問に思えて来た。
そこには、知ってしまった者の役割みたいなものがあるのではないかと。知ってしまった以上、知らないフリは出来ない。そういう思いで遅ればせながらこのブログを作成した。映画も本も、中原氏の魅力も、完全に言葉足らずだけど、この映画の存在や、こういう本が出版されてること、そして、こういう日本人の方がおられることを、一人でも多く知ってもらいたい。(せめて、私、ストレンジと縁のある人くらいはと)まずはそこからだと思っている 。
かなり昔、松竹クンが世界中を旅してる頃、チベットからのお土産に、自分に黄色い薄布の「ルンタ」(別名タルチョ)をくれた。大事に取っておいたハズで、これを機に探したのだが、残念ながら見つけることが出来なかった。「ルンタ」とは、チベット語で “風の馬” を意味し、人々の願いを仏や神々のもとに届けると信じられている、魔除けと祈りの旗のことである。非暴力の希有な心を持つ、チベットの人々の願いが天空にはためき、チベットに平和が訪れますように!
・映画『ルンタ』オフィシャルサイト http://lung-ta.net/
・NHK おはよう日本 https://www.youtube.com/watch?v=PAOTk5rwwmo
・ルンタプロジェクトhttp://www.lung-ta.org/earthquake.html
本日のご訪問ありがとうございます。良い事ことがありますように!
ストレンジ (土曜日, 23 1月 2016 00:21)
mさん、再度の書き込み、並びに情報を感謝いたします。
このブログを訪れる方は、離れてる自分の身内か、自分と縁あった友人くらいしか、いないと思うのですが(笑)、その中には自分のように、かような事実について知らなかった人もいたかと…(えっ、自分だけ?)とも思います。全く知らなかった人が、この記事で知ってもらえれば、書いた本人としては幸いです。そして、重い事柄ですが、何か各々で考える契機になれば幸いです。ありがとうございました。
m (金曜日, 22 1月 2016 14:42)
はい。
暴力を暴力で対決しても永遠に解決はしない。その通りだと思います。
だからこそ、平和という綺麗ごとだけを唱えて世界の現状を見て見ぬふりをするのではなく、暴力を起こさせないようにする努力は必要だと思うのです。自分たちの身は自分たちで守るという気概を持って生きることは、恵まれた環境の中で生きている私たちの責任だと思うのです。
ストレンジ (木曜日, 21 1月 2016 16:27)
mさん、詳細な書き込みを、まことにありがとうございます。
日本国内に居ると、いつの間にか自分の視野も自分の生活圏と同じくらいに狭くなり、何か知らないけれどせわしく日々に追い立てられ、あたりを見渡す余裕さえなくなりつつある感じもします。チベットで、多数の僧たちの焼身自殺があってるとは、自分は恥ずかしながら知りませんでした。その是非を、今の自分等が言えた立場ではありませんが、今世界にある暴力に、暴力で対決しても、結局は永遠に解決はしない、ことだけは明らかだと思っています。ありがとうございました。
m (木曜日, 21 1月 2016 15:54)
チベットはもうずいぶん前から中国の侵略により、虐殺や民族浄化が行われています。抗議のためのチベット僧たちの焼身自殺が長い間絶えません。日本ではほとんど報道されませんし、人権等を高らかに声にして自分たちの権利を主張する今の日本人も、このチベットの現状には見ぬふりをして気づこうともせず、ただただ日中友好を唱えて自分は平和主義者であるかのような気になっています。長年この現状を知ってほしくて事実の拡散をしてきた者は、偏向思想の持ち主のように見られることばかりでした。
今更・・・という感は否めませんが、日本人が少しでもこのことに気づき声を上げるようになることを望みます。