で、モスラは一体どうなったのか?

専門家に意見を伺う。

9月25(日)の画像、殆ど変化ナシ。そうっと触って見たが、生きてるのか仮死状態なのか?
9月25(日)の画像、殆ど変化ナシ。そうっと触って見たが、生きてるのか仮死状態なのか?

 

 

たびら昆虫自然園 様


初めてメールしますご無礼をお許し下さい。
私は、佐世保市吉井町に住む、◯◯◯◯(本名)と申します。

蝶の羽化について判らないことがあり、
たびら昆虫自然園さんに、お聞きすれば判るのでは?と思い、
不躾ながら御質問したくメール差し上げた次第です。


今年9月7日に、家の物置で、以下(たぶん長崎アゲハ)の、

幼虫を見つけました。
蝉の羽化は見た事ありますが、蝶のそれは初めてですので、自分が作成しているHPのブログに、その変化模様を随時UPして見守って来ました。

以下の画像、(発見〜蛹の画像添付している) 見て頂くと有り難いのですが、9月8日に蛹になった後、9月10日、若干色が回りの色に合わせて変わった気がしました。それ以後、ず~と観察しているのですが、本日、9月21日まで、殆ど変化がありません。


そこで質問なのですが、


1、ナガサキアゲハの場合、蛹から、どのくらいの期間で蝶になるのでしょうか?(アゲハ蝶は、通常1週間~10日位とネット情報では、あったのですが…)

2、この蛹は、もしかして越冬するのですか? だとしたら、何時頃、羽化しますか?越冬するようでしたら、その間、見守りにどのように注意したら良いでしょうか?

3、ネットで見ますと、害虫寄生も多いとのこと、この蛹はもしかして寄生されてるのではないでしょうか? 寄生してる、してないの見分け方は、何処で判別したら良いのでしょう?

尚、蛹は少し触っても動きません。(これまで触らない方が良いと思って、殆ど触ってはいません。)


以上、突然ではありますが、
ブログにその過程をUPして来た手前、結果がどうであれ、
その経過を最後までUPしたいと思い、
失礼ながら御質問させて頂いた次第です。

ご回答頂けると嬉しいです。
ご多忙中とは、存じますが、どうかよろしく、お願い致します。

ありがとうございます。

◯◯◯◯拝

 

 

 

 

110921(水)晴れ モスラの変化が予想つかない為、一番地元に近い場所、長崎県平戸市田平町にある、たびら昆虫自然園にダメモト突撃メールを送って見た。ここに問い合わせれば何か判るのでは?と思ったからだ。と、同時に、突然の見ず知らずのモノからのメールに、そんなに対応して頂けるだろうか? 大いに疑問ありつつでもあった。翌22日午前中、来た〜っ!

 

 

 

たびら昆虫自然園の西澤です。
写真等拝見いたしました。
幼虫の斑紋からナガサキアゲハで良いと思います。
さて、蛹の期間についてですが、昆虫の成長は、原則的に気温に左右され、例えば、モンシロチョウの卵では、春先や秋では1週間ほどで孵化しますが、夏では3,4日で孵化します。また、同じアゲハチョウ類でも同じ気温でも種類によって、その期間が違うものもあります。蛹の期間の違いではないでしょうが、園内で見ているとモンキアゲハの成虫の発生より、少し遅れてナガサキアゲハの発生が見られます。
 

今の園内の状況では、10日ほど前からナガサキアゲハの新鮮な成虫が見られ、カラタチその他のミカン類で産卵している姿が見られ、少しボロの成虫が多くなってきました。現在蛹だとすれば、今年羽化するのか、越冬するのか微妙なところですね。もし、蛹で越冬するなら、来年のツツジの花の咲く頃と思ってください。その場合、直射日光が当たらず、気温の変化のない(冬に暖房がない)、自然光の状態をの保てる場所に置き、手で触ることはできるだけしない方が良いです。
 

ご質問には、「害虫寄生」とありますが、昆虫の平均産卵数は200卵ほどで、本来、成虫の世代の100倍に増える能力があります。それを卵ーアリによる捕食、卵寄生ハチ、幼虫ー鳥、捕食性ハチ、寄生ハチ、ウィルス・カビ等の寄生等により、産卵できる成虫は2匹程度まで減らされることが、代々食料を食い潰さずに生き残って来れたわけで、そのような環境圧が、選りすぐれた世代を残せる作用をしてくれた訳です。ですから、寄生ハチが害虫といういい方には、私には抵抗があります。「害虫」という言葉は、その人の考え方で、自然の生き物を特定の枠に入れてしまう考え方だと思います。すべての昆虫には寄生ハチがいると考えてください。寄生されている場合、年内にわき腹などに穴を開けて出てくるでしょう。蛹が生きているかを知るときに、腹部がぐるぐると動けるかでたしかめられます(頻繁にいじらない方が良いですが)。
以上でよろしいでしょうか。
その後の経過等お知らせください。

 

 

110922日(木)晴れ こんなに早く、しかもこんなに、実に丁寧で真摯な回答が送られて来るとは!正直思って見なかった。昆虫に対する並々ならぬ熱い思いと、自然に対するこの方の哲学が、抑制の効いた文体故に行間から滲むようなメールだ。また多忙中に、わざわざ時間を裂いて回答して頂いたと拝察。私は恐縮しつつも素直に感激し、早速返事を送る。ビジネスメールの書き方等、殆ど知らないおバカな自分だが、おバカなりに精一杯感謝の言葉を連らねる。そして初めてメールする方なのに、こともあろうに、さらにずうずうしいお願いをする!

 

 

 

たびら昆虫自然園 西澤様


早くもご回答、それも実に丁寧に対応して頂き、
まことに恐縮です。ありがとうございます!

昆虫の平均産卵数が200卵程で、うち産卵出来る成虫が2匹!
その絶妙なバランスが自然界を保ってる訳ですね。
こういう事は知りませんでした。教えて頂き感謝致します!
これはもう、神のデザインとしか言いようがないですね。

そのような事実を知りますと、西澤様がおっしゃる通り、
「寄生害虫」という言い方は、全く失礼にあたりますね。
寧ろ、生態系のバランスを取る重要な役回りに見えて来ますから不思議です。

「全ての昆虫には寄生ハチがいる」という事実もまた、知りませんでした。西澤様の専門的な示唆のお陰で認識を新たに出来ました。
まことに、ありがとうございます。


西澤さん、
ここで、お願いがあるのですが、
聞いて頂けますでしょうか?

回答頂いた、今朝のメールを、
当方の質問メールとともに、

今回、自分の(稚拙ですが)HPで展開している蛹観察ブログに、
メールのやりとりをそのまま掲載したく思います。

ご専門の方の解説が、ブログを見ておられる方にも伝わった方が、
より良いと思うからです。
こういう世界は、知らない方は知らないものです。
自分のHPの反響はささやかなものですが、それでも、
少しでも、こういう昆虫の世界を、知らしめる契機になれたらと思います。

ご承諾頂けたら嬉しいです。

尚、やりとり掲載しましたブログは、再びご紹介させて頂きたく存じます。ご多忙中、大変恐縮ですが、ご返事、お待ちしております。

◯◯拝

 

 

 

110925(日)晴れ メールを送ったことを後悔していた。送った日は折しも3連休直前、ネットで「たびら昆虫自然園」を調べると月曜休館。夏休みは去ったとは言え秋の好天に恵まれた連休だ。見学者の対応に忙殺されておられるに違いない。だいたい、こういう瑣末なメールの依頼は無視されるに決まってる。自然園は多忙だし、他に重要な案件のメールが目白押しなのだ…と。「連休空けて返事来なかったら、それはそれで、そのままブログで紹介しよう…」と腹を括っていた。お昼にメール開いて見る。き、来た〜〜っ!

 

 

 

 

◯◯◯◯様
ご丁寧なメールありがとうございます。
余計なことと思いつつも、少しでも一般的に害虫とか、嫌われ者の弁護をしたいなどと勝手にお話してしいまい、失礼だったかと後から反省していたところでした。少しでもご理解いただけたならば、たいへん嬉しく思います。
さて、◯◯さんのHPでご紹介とのことですが、13年間、中学・高校の理科・生物の非常勤講師をしたり、このたびら昆虫自然園で昆虫などを観察しながら自分なりの考え方で、「・・・の法則」的に理論上まとめられてものではありません。しかし、間違った見方だとは思っていません。HPに載せられるのであれば、特にこちらにとって不都合ではありませんので、あの程度のものでお役に立つのでしたらお使いください。
また何かございましたらご質問なりメールでお送りください。

 

 

 

西澤様、ありがとうございます! 海のモノとも山のモノとも判らない当方の依頼に、ご多忙の中、真摯に対応して頂き、かつご承諾頂き深く感謝致します! また、さらにはご自身の事をも、少しお話頂き大変恐縮です。ありがとうございます。

 

            掲載を終えて

 

これまでの過程で気付いたのだが、今の時代、何かをじっと観察する時間というのは、日常ほぼ皆無ではないか?という疑問だ。常に何かに駆り立てられてるような昨今、視点は瞬間的にピンポイントで把握する事を求められ、じっと留まること良しとしないような空気を感じる。見ることは見られているものと不可分ではないという考え方あるが、観察という行為にはそういうが横たわってる気がする。

 

日本中の昆虫施設、何処でも良かった。だが、地元にもあることを思い出し軽い気持ちで質問した。このナガサキアゲハの蛹は今後もずっと追いたいが、それにも増して、たびら昆虫自然園の西澤様のメールからは、昆虫、ひいては生物全体に関する、うまく言えないが、覚悟に似た熱い気合いを、並々ならぬ何かを直感した。どうしてこういう方がこの西果ての地におられるのだろう?という感じだ。失礼かもだがおよそ田平やこのあたりから生まれ出る気配ではない。知らないうちに自分はもしかしたらタイヘンな方とメールやりとりしてるのでは…と遅ればせに慄いてもいる。

 

だが、仮にだとしても、それがどうした?である。こちらは何も無くすものはない。だって何も無いんだもの。なので、今後も気軽に質問して見ようと思ってる。

 

そういう訳で、西澤様ありがとうございます!今後とも宜しくお願い致します!

 

本日もご訪問ありがとうございます。それでも良い事がありますように!

 

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