『惑星ハシグチ』を小説で体感!!

地元が舞台!哀愁の物語『天涯の汽笛』!!

11月30日(月)。話は数年前に遡る。未だ私が福岡に居た頃、お盆かGWで帰省した折りのことだ。家族で隣町へ出かけて行った際、とある喫茶レストランで食事をした。その店内の雑誌や新聞があるコーナーに混じってこの本があった。

 

このあたりの喫茶店に(喫茶店さえ珍しいのだが)雑誌はともかく、本が置いてあるのは珍しい。最初は、きっとこの店のオーナーだか親類だかの、よくある自費出版の自分史的本か?と思った。しかし、発行は、福岡の老舗の出版社「葦書房」。ISBN(平たく言えば書店に流通する出版物の図書コード)も付いている、立派な単行本だ。

 

あとがきを読んで見ると、「旧国鉄世知原線の、今は遊歩道になっている軌道跡を、『天涯の汽笛』執筆を決意した三年前の十二月初旬、ひとり歩いてみた。」…とある。旧国鉄世知原線、と言えば、拙宅のすぐ下をかつて通っていた線路だ。表紙の写真からも、どうやらこれを題材にした小説らしい…、奥付けをみると、2000年発行とある。そう古い本でもない。少し興味を持って、タイトル著者名等をメモした。

 

その後、福岡に戻り地元の図書館に行った際、フト、その本のことを思い出し、検索すると、はたしてあった。このあたりが福岡K市の図書館の強み。蔵書32万冊以上、たいていの本はある。早速借りて読む。読んで驚く!

自分の町はもとより、実家のすぐそばの風景が小説に登場しているではないか! 即、身内等に知らせた次第だった。

 

軽便鉄道はお米プロジェクト'09の田圃のすぐそばを走っていた。(現在は遊歩道)
軽便鉄道はお米プロジェクト'09の田圃のすぐそばを走っていた。(現在は遊歩道)

小説『天涯の汽笛』は 、昭和の初め〜炭坑景気に沸く長崎県北松浦郡(現佐世保市)世知原村を起点に十数キロ先の海岸の港まで石炭輸送をしていた旧国鉄世知原線、その軽便鉄道を受け持つ機関士の、哀切感漂う中編小説である。

 

作者、山本武秀という方は、大手企業退職後、地元佐世保市郊外の町で郊外書店を経営されておられる。この本屋さんは知っている。少し離れた町にある。それとなく訪ねて行っ時は子供さんらしき方が店におられた。そろそろ読後の感想の手紙でも出して見ようかとも思う。

小説の重要な舞台旧祝橋駅跡。プラットホームの後にその面影が偲ばれる。
小説の重要な舞台旧祝橋駅跡。プラットホームの後にその面影が偲ばれる。

何故ならば、この本の存在を、母や地域の人に話しても誰も知らなかったからだ。なにせ活字文化ゼロ地帯だからそれもしかたがないのだが、にしても一人位知っていそうなもの。素直に悲しいが、それがここの現実。私は地元に居なかったけど、出版された当時は新聞とかメディアで話題になってもおかしくはない。一人くらい、小説の舞台となった場所からの読者の反応があってもいいのでは?と思うからだ。「拝啓、初めまして。…読みました。小説の舞台に住んでいるものデス…」

小説に登場する旧国鉄世知原線の、貴重な最後の記念切符。福岡在住Hさんの御厚意により最近私の手元に届く。感謝します!
小説に登場する旧国鉄世知原線の、貴重な最後の記念切符。福岡在住Hさんの御厚意により最近私の手元に届く。感謝します!

本は、アマゾンでも入手可能の様子。物語は冬の季節から始まるので、今頃から読むと、より臨場感が増す。鉄道こそ廃止になって遊歩道になったが、それを包み込む風土は、昔も今も、そう変わりはない。

 

個人的には哀切感がありすぎて、いやはや〜というところもあるが、この小説が今の所、日本で唯一、惑星ハシグチ及びその周辺の風土をあますところなく描写している貴重な本でアリマス。 この冬は小説『天涯の汽笛』で、惑星ハシグチを体感して見ては如何? 幻の石炭軽便鉄道の汽笛が聞こえて来るかもデス。